顧問先の中国税務問題に、日本の税理士として取り組む
結論
顧問先が中国に子会社を持つ場合、日本の税理士が中心となって対応できるのは、主として日本法人の申告、日本の国際税務上の判定、顧問先への説明、中国側へ確認すべき事項の整理です。
一方、中国子会社の申告・当局対応・現地資料の確認などは、中国の制度と実務に対応できる専門家との連携が必要になります。ここでは、日本の税理士と中国側専門家とのハイブリッド方式による業務提供をご提案します。
顧問先から中国案件の相談を受けたら、まずは話を聞いてみましょう。税理士の皆様が顧問先との窓口となり、日本側の税務判断を担いながら、中国側の事実確認や手続を現地の専門家に任せるハイブリッド方式が有効です。
中国側との連携が必要になりやすい業務
- 中国子会社の税務申告や税務当局への対応
- 中国の会計・税務処理の適否に関する判断
- 中国の財務諸表、税務申告書、発票等の内容確認
- 中国現地からの資料取得
- 中国税務を前提とする契約、送金、清算等の手続
- 中国法に基づく法律意見や法定監査
1.中国子会社の税務相談で最初に確認したい3つの区分
中国子会社に関する相談を受けたら、業務を次の3つに分けて考えます。
① 日本側で完結する業務
日本法人の申告や日本税法上の判断は、主に日本側対応の範疇でしょう。例えば、次のような論点です。
- 外国子会社配当益金不算入の判定
- 外国税額控除の計算
- 国外関連者寄附金の判定
- 中国子会社株式の評価損、消滅損の検討
- 貸付金の貸倒損失・債権放棄の検討
ただし、その判断に中国子会社の実態や数値が関係する場合、日本側の資料だけでは結論を出せないことがあります。
② 日本側で判断するが、中国側の資料が必要な業務
中国案件で最も多いのが、この区分です。最終的な税務判断は日本側で行うものの、その前提となる事実や数値を中国から入手しなければならないケースです。
例えば、外国子会社合算税制を検討する場合、次の資料が必要になることがあります。
- 中国子会社の財務諸表
- 企業所得税の年度申告書
- 適用している優遇税制の認定資料
- 株主構成や出資関係
- 事業所の賃貸借契約書
- 従業員数や社会保険納付状況
- 役員・従業員の職務内容
- 関連当事者取引の明細
中国語の資料名や記載項目が分からなければ、依頼すべき資料を正確に特定できません。また、入手した資料が申告前の試算表なのか、税務申告後の確定数値なのかによっても判断が変わります。中国側の会計・税務実務を理解する専門家と連携した方が、確認漏れを防ぎやすくなります。
③ 中国側で対応する業務
中国子会社自身の税務申告、中国の税務当局との連絡、中国制度上の届出などは、中国側の制度に基づいて行います。代表例は次のとおりです。
- 中国子会社の企業所得税・増値税等の申告
- 中国税務当局への届出・説明
- 中国側の税務調査対応
- 租税条約上の待遇を受けるための中国側手続
- 配当・利子・使用料の送金に伴う税務手続
- 移転価格文書の中国側対応
- 中国子会社の清算に伴う税務抹消
2.税理士の皆様が顧問先の窓口を担う意義
顧問先が求めているのは、中国の制度だけを説明する人ではなく、最終的に日本法人へどのような影響があるのかを整理してくれる人です。
例えば、中国子会社が企業所得税の優遇税率を適用している場合、中国側では適法な優遇であっても、日本では外国子会社合算税制の租税負担割合に影響する可能性があります。
また、中国子会社に対する債権放棄が中国側で適切に処理されていても、日本側では国外関連者寄附金や貸倒損失の問題が残ることがあります。
このような案件では、次の分担が考えられます。
- 日本の税理士が顧問先から相談内容を聞く
- 日本側の税務論点を整理する
- 中国側へ確認すべき事項と必要資料を特定する
- 中国側専門家が現地の事実・制度・資料を確認する
- 日本の税理士が日本税法上の結論をまとめる
- 必要に応じて日中双方の専門家が顧問先へ説明する
税理士の皆様にはお手数をおかけすることになりますが、案件に積極的に関わることで、顧問先との信頼関係を維持していただくことができます。
3.中国子会社の初回相談で確認する項目
中国子会社に関する相談を受けたら、少なくとも次の事項を確認します。
- 中国子会社の会社名と所在地
- 日本法人の持株割合
- 事業内容
- 適用している企業所得税率と優遇税制
- 最新の財務諸表と税務申告書
- 日本親会社との取引内容
- 貸付金、債務保証、出向者給与等の有無
- 配当、持分譲渡、清算等の予定
- 中国側の会計事務所・税務担当者の有無
- 顧問先が今回判断したい事項と期限
最初からすべての資料を集める必要はありません。まず相談の目的を確認し、その目的から必要資料を逆算します。
4.中国側の専門家を選ぶ際に確認したいこと
中国側の専門家を選ぶ際は、「中国に事務所がある」「日本語が通じる」という点だけでは不十分です。少なくとも次の事項を確認します。
- どの法人・事務所が契約当事者になるか
- 実際の担当者と責任者は誰か
- 日本税務との接続を理解しているか
- 中国語資料を日本側で利用できる形に整理できるか
- 業務成果、期限、報告方法が明確か
- 情報管理と守秘義務をどのように定めるか
- 報酬と追加業務の基準
共同対応では、専門知識だけでなく、役割分担と顧客関係の扱いが重要になります。
5.まとめ|中国税務は日本側と中国側の役割分担が重要
中国子会社に関する業務は、「日本の税理士が対応できるか、できないか」という二択ではありません。実務上は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
- 日本側で主として判断・対応する業務
- 日本側で判断するために中国側の資料・確認が必要な業務
- 中国側の制度に基づいて現地で対応する業務
税理士の皆様が顧問先との窓口を担い、日本税務上の判断を行いながら、中国側の専門家が現地の資料・手続・制度確認を補うハイブリッド方式が有効です。
中国案件をすべて自ら処理する必要はありません。一方、最初から案件全体を丸投げするのも早計です。担当範囲を明確にし、中国側の専門家と共同作業をすることが、顧問先との信頼関係をより深める一歩になると私たちは考えています。
中国案件についてご相談ください
次のようなご相談に対応しています。
- 中国側へ確認すべき事項の整理
- 財務諸表・税務申告書等の取得と内容確認
- 中国側の会計・税務処理の調査
- 日中双方の担当範囲の設計
- 個別案件の共同対応
- 中国側専門家を含めた顧問先への説明
中国側の実務部分だけをご相談いただくことも可能です。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別案件に関する法務・税務意見ではありません。具体的な判断は、事実関係と最新法令を確認したうえで行う必要があります。
