中国子会社の税務論点を見逃さない初回面談|税理士が聞くべき10の質問
中国に子会社を持つ顧問先から相談を受けたとき、何から聞けばよいのか迷う場面があります。現地の制度を細かく調べる前に、日本側の申告に影響する事実を押さえておくと、その後の判断が早くなります。今回は、初回の面談で確認しておきたい10項目を、そのまま質問として使える形で整理します。
最初の面談で押さえるのは日本側の申告に効く事実
中国の制度は範囲が広く、初回から現地の細部に入ると面談が終わりません。確認すべきは、日本の法人税申告と会計処理に影響する事実に限られます。以下の10項目は、面談で聞く順に並べています。
そのまま印刷して手元に置き、回答を書き込む使い方を想定しています。
なお、本記事で扱う制度は2026年9月時点のものです。
資本関係について確認すること
出資の形と持分割合は、どの制度が適用されるかを決めます。最初に押さえる3項目です。
1 日本側の出資比率は合計で何パーセントか
外国子会社合算税制では、居住者と内国法人などによる直接および間接の持分の合計が50%を超える外国法人が、外国関係会社にあたります。判定は単独の持分ではなく合計です。顧問先の出資が40%であっても、日本の他の株主と合わせて50%を超えれば対象になります。合弁の相手が日本企業かどうかを、この段階で確かめておきます。
持分割合は、外国子会社配当益金不算入の適用にも関わります。こちらは、配当の支払義務が確定する日以前6ヶ月以上、25%以上の持分を継続して保有していることが要件です。出資比率が25%を挟むあたりにある場合は、株主名簿の変動もあわせて聞いておきます。
なお、持分が50%以下であっても、契約などを通じて実質的に支配していると認められる外国法人は、外国関係会社として扱われます。議決権の配分や役員の選任権について、定款や合弁契約に特別な定めがないかどうかも確かめておきたいところです。
2 中間に持株会社を挟んでいないか
香港やシンガポールの持株会社を経由して中国子会社を保有している例があります。この場合、中国子会社だけでなく、中間の持株会社も外国関係会社の判定対象です。持株会社に事業の実体がなければ、特定外国関係会社にあたる可能性があります。
特定外国関係会社では、租税負担割合が27%以上でなければ会社単位の合算課税が免除されません。中国子会社そのものより、間に挟まった会社のほうが論点になることがあります。組織図を紙に書いてもらうのが、いちばん早い確認方法です。
3 出資金の払込みは完了しているか
中国では2024年7月1日に改正会社法が施行され、有限責任会社の株主は会社の設立日から5年以内に登録資本金を全額払い込むこととされました。施行前に設立された会社にも経過措置があり、払込期限が2032年7月1日以降となっている場合は、2027年6月30日までに期限を短縮する対応が必要です。
払込みが未了であれば、近いうちに追加の資金拠出が必要になります。その資金を貸付けで出すのか増資で出すのかで、日本側の処理は変わります。逆に、登録資本金が事業規模に比べて過大な場合は、減資という選択肢もあります。
面談の時点で残額と期限を確認しておくと、後から慌てずに済みます。確認先は営業執照と定款です。顧問先の手元にない場合は、中国側から取り寄せる最初の資料になります。
現地の会計と税務の体制について確認すること
数値をどこから取り寄せるのか、その入手経路を先に把握します。
4 現地の記帳と申告は誰が担当しているか
社内の財務担当者なのか、外部の代理記帳機構なのか、会計師事務所なのかを確認します。外部に委託している場合は、その機構名と契約範囲まで聞いておきます。
記帳と申告の代行だけを委託していて、日本側の申告に必要な資料の作成までは含まれていない、という契約が少なくありません。資料を依頼したときに誰が動くのかが、ここで決まります。
現地の担当者が日本語を話せるかどうかも、この場で聞いておきます。中国語だけの窓口であれば、依頼のたびに顧問先の駐在員を介することになり、伝達の途中で内容が変わりがちです。
5 年度監査を受けているか
中国子会社は、会計師事務所による年度監査を受けているのが一般的です。監査報告書があれば、租税負担割合の計算にも、連結決算の数値の検証にも使えます。受けていない場合は、判定の根拠となる資料を別にそろえる必要が出てきます。
直近の監査報告書を1部もらえるかどうかを、この場で聞いておきます。中国語で作成されているのが通常のため、日本語の要約が必要になるかどうかもあわせて確かめます。
あわせて確認したいのが、決算期のずれです。中国の会計法は、会計年度を毎年1月1日から12月31日までと定めており、親会社に合わせて変えることはできません。顧問先が3月決算であれば、3ヶ月のずれが生じます。
中国子会社の企業所得税の確定申告期限は5月31日で、日本の3月決算法人の申告期限とほぼ重なります。中国側の数値が固まるのを待つと間に合わないため、監査の途中段階で数値を受け取る段取りが要ります。
6 適用している優遇税制はあるか
中国の企業所得税の法定税率は25%ですが、高新技術企業の認定を受けると15%に下がります。高新技術企業とは、中国政府が定める技術分野で研究開発を続け、要件を満たすと認定された企業のことです。このほか、小規模な企業を対象とした優遇や、研究開発費の上乗せ控除もあります。
これらが適用されていると、租税負担割合が20%を下回る可能性が出てきます。経済活動基準のいずれかを満たさない対象外国関係会社では、租税負担割合が20%以上であれば会社単位の合算課税が免除されます。つまり、優遇税制の適用は合算課税の検討に直結します。
顧問先が優遇の適用を認識していない場合もあるため、認定書類の有無まで確認しておきます。
日本側の申告に影響する取引について確認すること
親子間でどのようなお金と人が動いているかを聞きます。ここが移転価格と寄附金の論点につながります。
7 日本の親会社との取引はどの程度あるか
製品や部品の売買、業務委託、技術指導など、取引の種類と年間の金額を確認します。国外関連者との取引がある法人は、規模を問わず、国外関連者に関する明細書を確定申告書に添付します。
さらに、前事業年度における一の国外関連者との国外関連取引の合計額が50億円以上、または無形資産取引の合計額が3億円以上であれば、ローカルファイルの同時文書化義務が生じます。
中堅規模の顧問先では基準に届かないことが多いものの、義務がないことと文書が不要なことは別です。税務調査で求められれば、60日以内に提出しなければなりません。
取引の方向も押さえておきます。親会社が製品を売っているのか、子会社から仕入れているのかで、利益がどちらに残る構造かが変わるためです。中国子会社が単純な製造機能や販売機能しか持たないにもかかわらず赤字が続いている場合、中国の税務当局が移転価格の観点から関心を持つことがあります。
価格の決め方について、社内に説明できる資料があるかどうかを聞いておきます。
8 貸付けや配当の実績はあるか
親会社から中国子会社への貸付けがある場合、利率をどう決めたかを確認します。無利息や著しく低い利率であれば、国外関連者に対する寄附金と認定される余地が出てきます。
債務保証をしている場合の保証料も同じ論点です。
配当については、日中租税条約により中国での源泉税は10%が上限とされています。日本側で外国子会社配当益金不算入の適用を受けると配当の95%が益金に算入されず、その代わり中国で課された源泉税は損金にも外国税額控除にも使えません。過去に配当を出したことがあるか、今後の予定があるかを聞いておくと、税負担の見込みを早めに示せます。
9 出向者を送っているか
日本から出向者を送っている場合、給与をどちらが負担しているかを確認します。親会社が較差補填金として一部を負担している場合、その金額の根拠が説明できるかどうかが論点になります。
出向契約の内容と実態が食い違っていると、中国側で恒久的施設と認定されるおそれもあります。出向者本人の中国での個人所得税の申告状況も、あわせて聞いておきます。
社会保険については、日中社会保障協定にもとづく適用証明書を取得していれば、一定の範囲で中国側の加入が免除されます。取得の有無は、人事部門ではなく駐在員本人が把握していることもあります。人数が1人か2人であっても、論点の数は変わりません。
今後の方針について確認すること
過去と現在を聞いたら、最後に先の話を聞きます。方針が分かると、いま手をつけるべき論点の優先順位が決まります。
10 中国子会社を今後どうする方針か
事業を継続するのか、縮小するのか、撤退や譲渡を考えているのかを聞きます。撤退の意向がある場合、清算と持分譲渡のどちらを想定しているかで、必要な準備が変わります。清算では中国側の税務清算に時間がかかり、日本側で子会社株式消滅損を計上できるかどうかは、現地の手続きの完了時期に左右されます。貸付金が残っている場合は、その回収か債権放棄かという判断も加わります。
方針が固まっていない段階でも、選択肢と所要期間を伝えておくと、意思決定の時期が前倒しになります。中国の清算は、税務清算と債権者への公告を経るため、順調に進んでも1年前後を見込むのが通常です。撤退を決めてから相談を受けるより、検討段階で関与するほうが、選べる手段は多く残ります。
聞き取った内容をどう次につなげるか
10項目の回答は、そのまま検討すべき論点に対応します。
出資比率と優遇税制の適用があれば、外国子会社合算税制の判定に進みます。
親子間取引と貸付けがあれば、移転価格と寄附金の検討に進みます。
出向者がいれば、較差補填金と恒久的施設の論点を確認します。
撤退の方針が出てくれば、清算と持分譲渡の比較に移ります。
面談の場ですべてを回答する必要はありません。どの論点が立つかを見立てて、必要な資料を中国側に依頼するところまでを、その日のうちに決めておけば十分です。
最初に依頼する資料は、直近の監査報告書、企業所得税年度申告表、営業執照と定款の3点です。優遇税制の適用があれば、その認定書類も加えます。これらがそろえば、外国子会社合算税制の判定に必要な情報のほとんどが埋まります。資料が届くまでに2週間から1ヶ月ほどかかることを見込んで、依頼の時期を逆算しておきます。
まとめ
初回の面談で聞くべきことは、中国の制度そのものではなく、日本側の申告と会計処理に影響する事実です。
出資比率、優遇税制、親子間取引、出向者、今後の方針の5つを押さえておけば、次に検討すべき論点はおのずと絞られます。
そのうえで壁になるのが、中国側から必要な資料を取り寄せる工程です。現地の担当者に何を依頼すればよいのか、届いた中国語の資料をどう読むのかという段階で、手が止まる事務所が少なくありません。
資料の名称を正しく指定できないと、必要のない書類が届き、やり取りが往復します。この往復が2度3度と続くうちに、日本側の申告期限が近づいてくるという流れになりがちです。
中国子会社の資料の取り寄せと読み取りについて支援が必要な場合は、必要書類の特定から現地への依頼文の作成までお引き受けします。
中国側の実務確認・資料対応が必要なときは
本記事の10項目で確認した結果、中国側での資料取得、内容確認または現地専門家への照会が必要になる場合があります。
日本側の顧問対応と税務判断は貴事務所が担い、中国側の実務確認を必要な範囲で共同対応することが可能です。
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